6月14日から21日まで、8日間にわたって開催されたU23カテゴリー世界最高峰のステージレース「ジロ・デ・イタリア ネクストジェン(UCI2.2U)」に、チームNIPPO・ヌオーヴァコマウト・オボールが初出場し、鎌田晃輝、岩村元嗣、成田光志の3名が日本人選手として初めて、49回の歴史を誇る格式高いレースに挑みました。

南イタリアのレッジョ・カラブリアから北上した8日間のレースは、前半に平坦・丘陵ステージをこなし、5日目に急勾配なアップダウンを繰り返すジェットコースターのようなテクニカルなサーキットレース、6、7日目には過酷な山岳ステージ、そして最終日に22.2kmの個人タイムトライアルが組み込まれていました。
U23の選手たちにとって、8日間の本格的なステージレースの経験は乏しく、連日、厳しいレースに耐えるとともに、チームとして長いレースを戦っていくための様々な学びの場となりました。第3ステージで体調不良を抱えていたジュゼッペ・シアッラ、第5ステージで落車のケガの影響からサミュエル・ベルトッリと、機材トラブルに見舞われた成田光志、第6ステージで力を出し切った岩村元嗣、そして第7ステージでは鎌田晃輝が無念のリタイア。チームからは唯一、U19イタリア選手権3位の実績をもつミケーレ・パスカレッラが、レース後半から本来の強さを発揮し、才能の片鱗を示しながら完走を果たしました。

優勝したロレンツォ・フィン(イタリア/レッドブル・ボーラ ルーキーズ)とそのチームメイトの圧倒的な強さから、「いままで経験したレースでもっとも厳しい」と日本人選手たちが口を揃える、完走率65%ほど、多くのヨーロッパ人選手にとっても非常に厳しいレースになりました。また資金力のあるUCIワールドチームのデベロップメントチームの強化が急速に進んでいることも強烈に印象付けられました。しかし、今回、“本物”の世界トップに挑んだ経験は、思うような結果には繋がりませんでしたが、ヨーロッパプロをめざす日本人選手たちに貴重な学びをもたらし、選手たちは今大会で浮き彫りになった課題と向き合い、強い決意をもって世界への挑戦を続けていきます。
引き続き、過酷な世界をめざす日本人選手への応援をどうぞよろしくお願いいたします。

水谷壮宏監督のレポート
今大会はスプリンター向けの平坦ステージは2ステージのみで、山岳と丘陵を組み合わせたステージが多く、スピードが緩むことは稀で、常に非常にハイペースで進行する厳しい戦いとなりました。近年に象徴されるトップレベルのレースの傾向どおり、登坂力だけでなく、平坦区間や下り区間を含めた高速域での巡航能力、集団内での位置取り、そしてレース展開を読む力が、これまで以上に重要であることを改めて実感しました。ヨーロッパの強豪にとっても数年前の常識は今は通用しません。
日本人3選手について最も強く感じたことは、登坂力不足に加え、ステージレースにおける経験不足です。U23の1〜2年目のメンバーがメインだったので仕方がない面もあったかと思いますが、今回ヨーロッパのレースで初めてデベロップメントチームに監督として帯同する中で、「選手自身は当然理解している」と思っていたことが、実際には十分に共有・理解されていない場面が多くありました。特に日本のジュニア世代の選手はナショナルチームでの活動の機会も活かしながら、国内では絶対経験できないハイレベルなステージレースを、ヨーロッパでもっと経験していくことが重要だと感じました。

レース中の判断や補給、位置取り、チームカーとの連携、機材管理など、細かな部分においてU23カテゴリーの選手とエリートカテゴリーの選手との間には、日本人だけでなく、ヨーロッパ人においても言えることですが、想像以上に大きなギャップがあることを感じました。
また、せっかく日本を離れ、ロードレースの本場であるヨーロッパで活動しているにもかかわらず、周囲から学ぼうとする姿勢や、新しい考え方・文化・習慣を積極的に受け入れようとする意識が、まだ十分ではないと感じる場面もありました。日本国内で活動していた頃の自分自身の考えやジュニア時代の経験を大切にすることは重要ですが、ヨーロッパでのレース活動は、日本では得られない価値観やノウハウに触れられる貴重な機会であることを自覚することも大切です。パフォーマンス向上だけでなく、チームスタッフ、チームメイトとの日々の振る舞いやコミュニケーション、チーム内での役割意識、プロ選手としての姿勢そのものを学ぶことが、今後のステップアップに必ず役に立つのではないかと強く感じました。

成田光志は、4日目のスタート早々、不運なメカトラブルに見舞われ、本来の力を発揮する前にリタイアとなりました。初日から徐々に調子を上げていただけに残念な状況でしたが、酷な言い方をすれば実力的に余裕があればメイングループへの復帰も果たせた状況でした。しかし、世界のトップレベルのチームと選手の走り、レーススピードをU23の1年目で体験できたことは、必ず今後の成長に繋がることでしょう。
岩村元嗣は、厳しい山岳ステージで遅れても最後まで粘り強く走り続けましたが、今後の成長に向けて自身の課題と向き合う良い機会となったはずです。
鎌田晃輝も後半は完走を目指して戦い続けましたが、厳しい山岳とハイペースな展開のなかで今後ヨーロッパを主戦場に活動して行くために直面する課題が明確になった大会だったと思います。
3選手に共通して言えることは、登坂力の向上はもちろんのこと、平坦区間での持続的な高出力や高速レースへの対応力をさらに強化していく必要があるという点です。一方、今回の8日間は結果だけではなく、世界レベルのレーススピードや戦術、補給、機材、集団走行技術など、多くのことを学べる貴重な経験になったと感じています。特にU23世代の選手にとっては、このようなステージレースへの参戦機会を増やすことが非常に重要です。経験を積み重ねることで、レースへの対応力や判断力が養われ、将来的なキャリアアップにも大きくつながると考えています。今回得た経験と課題を今後の活動に生かしていくことで、3選手ともさらに成長していけると期待しています。
