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サイモン・カー; 二重のアイデンティティ

今季、私たちのチームをフォローしてくれているファンなら、“サイモン・カー”という名前を耳にしたことがあるでしょう。ワールドツアーデビューを飾ったばかりの新人選手は、世界で最も厳しいレースの1つであるストラーデビアンケで11位、一躍、世界中のサイクリングファンから高い注目を集める存在になりました。

彼が特別な選手であることは明らかです。速いだけでなく、闘争心にあふれています。チームのCEOであるジョナサン・ヴォーターズは、彼の回復力に注目し、2021年のシーズンに向けて彼と契約することを決めました。”例えるなら、彼は大きな闘犬ではなく、大きな大きな闘争心をもった犬なんだ」とヴォータースは言います。

現在、彼はジロ・デ・イタリアに参戦中。逃げにアグレッシブに挑み、彼よりもはるかに経験豊富な選手たちに対して攻撃を仕掛けています。そして今シーズン、すでに22歳のカーを取り巻く多くの報道と興奮がありました。インタビュー記事では、そのほとんどすべてにおいて、彼は“若い英国人選手”と呼ばれていることに気づいたかもしれません。カーはイギリスのヘレフォードシャー(Herefordshire)で生まれ、イギリスの競技ライセンスでレースに参戦していますが、実際にはフランス南西部のオード(Aude)県とアリエージュ(Ariège)県で育ち、フランスのパスポートを持っています。

カーは、ピレネー山脈のふもとにあるカルカソンヌ(Carcassonne)の南に位置するホームタウンを“牧歌的”と表現しています。言い換えれば、自転車に乗るのに最適な場所です。このような環境と生まれ持った才能により、若き日のカーにとってサイクリングは必然的に思い描く未来の一部になりました。

「ここはサイクリングに打ち込むのに、世界で最も適した場所の一つです。私の両親は当初、イギリスでは経済的に叶わなかったより良い生活を求めて、フランスに引っ越しただけでした。だから、私がプロの自転車選手になったのは偶然だったと思います」とカーは話します。

しかし、二つの国籍をもつ選手が、語学学習を専門とする国際的な教育会社であるEFエデュケーション・ファースト社がスポンサードするチームに加わったことは必然だったようにも感じます。「私はフランス語と英語を流暢に話すことができます。フランス人は私がイギリス人であるとは言えず、その逆も同様です。両方の言語を話せなかった記憶はありません。物心ついた頃には、私は二つの言語を理解していました。最初は少し英語を話したに違いありませんが、幼稚園に通い始めるとすぐにフランス語を習得しました」とカーは言います。さらに他の言語に関しては、彼はスペイン語をかなり上手に話します。 「スペイン語は、フランスの地元の学校で最もよく教えられている外国語。私はまだ多くを話す自信はありませんが、スペイン語を理解して読むことは簡単にできます」。

カーは、新しい言語を習得するためにはもちろん練習や勉強が不可欠であると信じていますが、その言葉を話す国でじっさいに話すことで、本当の意味の習得ができると考えています。「スペイン語の能力を高めるために、スペインで時間を過ごすのは素晴らしいことです。すでに私には基礎知識があるので、もし、ほんの数週間でも完全にスペイン語に没頭できれば、ほぼ流暢に話せるようになると確信しています」とカーは話します。

カーは家では家族とほとんど英語で話しています。また、EFエデュケーション・NIPPOの15カ国から集まったチームメイト同士では、英語が最も一般的な言語となっています。そのため昨年からの隔離期間中はフランス語をあまり使う機会がなく、普段よりも少し言葉が出にくくなったと言います。「慣れ親しんだ言語であっても、すぐに忘れて失われてしまうのは恐ろしいこと。この1年間、様々なロックダウンがあったため、数ヶ月間フランス語をほとんど話さないこともあり、急にフランス語を話さなければならなくなったとき、言葉を探すのに苦労しました」とカーは言います。

そして、二重国籍のおかげで、新しいチャンスを得ることができたと話します。しかし、自転車競技のプロを目指し始めた若い頃は、ナショナルチームのサポートを受けられなかったことが一つの障害となっていました。「ヨーロッパ選手権や世界選手権はもちろん、国内のナショナル選手権にも出たことがありません。しかし、各国の自転車競技連盟からのプレッシャーもなく、自分のペースで成長することができました。それが今のところいい結果につながっているのだと思います」とカーは語っています。

ロードキャプテンのミッチェル・ドッカーは、すでにサイモンのスキルに感銘を受けており、今シーズンの活躍を期待しています。「ワールドツアー1年目のカーの年齢を忘れそうになります。彼はすでに大きなステップアップを遂げています」とドッカーは言います。

サイクリングだけでなく、このルーキーは大の食通でもあります。カーは、新しい国で一番好きなことは、その土地の料理を試すことだと言います。「新しい土地で今まで食べたことのない料理と出会う瞬間は最高です。私は家で料理をすることも大好きですが、そのような料理をけっして家で再現しようとは思いません。それではせっかくの料理が台無しになってしまうから」。

旅を楽しむためには、遠くに行ったり、飛行機に乗って目的地に行く必要はありません。「家から自転車で行ける距離にある新しい道やコース、あるいはまったく別の国のクールな場所など、新しい場所を見つけるのが楽しい。探索が好きなんです」とカーは言います。

北米には行ったことがないので、いずれ行ってみたいと思っているそう。「近いうちに行けることを祈っています」とカーは語ります。今のところ、カーはイタリアで開催されているジロを精一杯に走っています。レースの合間にアルベルト・ベティオールとイタリア語の練習をしながら、過酷な山に挑み、逃げ切りを夢見るカーにぜひ注目してください。

オリジナル記事 https://www.efprocycling.com/simon-carrs-dual-identity/

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