織田が落車にて棄権、個人総合成績をかけたクイーンステージへ
地中海に沿って、アランヤからケメルまで、東から西へと移動する第4ステージは完全にフラット。そして翌日に山頂フィニッシュのクイーンステージが控えていることもあり、レースに大きな動きはなく、強豪チームが難なく集団ゴールスプリントの展開へとまとめあげる。貪欲に上位をめざす織田が集団前方、これまででもっとも良い位置からスプリントを仕掛けようとしているときに、集団の左手、そして織田が位置する右手で連続して大きな落車が発生。織田もフェンスに頭や肩を打ち付ける形で巻き込まれ、起き上がることができず、救急車にて病院へ搬送。幸い、骨折等のケガはなかったものの、肩や膝、手など痛みが強く、また頭を打っているため、悔しさが残るなかでここでリタイアとなった。
4選手が同時に搬送され、地方都市の病院は野戦病院さながらの雰囲気に。そして搬送早々、破傷風の追加ワクチンを接種されたことも印象的。
脳、内臓、骨、大きな問題はなく、ほっと一安心。しかし、調子が良かったなかで、最後まで走りきれなかったことへの悔しさは拭えない。
大会は折り返しを迎え、第5ステージは個人総合成績を決定づける大会唯一の山頂フィニッシュが組み込まれた過酷な山岳ステージだった。ここでエースを務めるのは、ショナタン・べグリ、シュモン・トラッチら登坂力に長ける選手たち。ワールドチームのアスタナが麓からペースアップし、本格的な山岳が始まると集団はあっという間に小さくなる。「速いペースだなぁ、、、と集団の先頭を確認したら(ベテランスプリンターの)グライペルだったんだ!」とレース後に振り返るべグリ。世界のトップスプリンターの登坂力に衝撃を受ける。
海抜1830m、雪が残る山頂にチーム内最高位で戻ってきたのはトラッチで区間39位。22歳、スプリント力を兼ね揃えるオールラウンダーが確かな実力を発揮した。個人総合成績もUCIポイント圏内の39位とし、残り3ステージ、終盤戦に挑む。
強風の影響により高負荷となった終盤3ステージ
エーススプリンターである織田、そして彼の牽引役を勤めていたカルヴァン・ディクが体調不良にて、第6ステージでリタイア。スプリントでのカードを失ったチームだったが、残ったメンバーそれぞれにベストを尽くし、また少しでも多くの経験を積むべく、最終ステージまで走り切ることも大きな目標となる。ほとんどの選手が経験したことがない8日間の本格的なステージレース。疲労の色も選手たちの表情に滲むようになった。
残り10km地点に2級山岳が設定され、猛スピードでフィニッシュへとめざす第6ステージでは、弱冠18歳のファビオ・クリスティンが27位。第7、第8ステージでは嵐のような強い風が吹き荒れ、集団が何度も割れるような厳しい展開となったが、第7ステージでは70名ほどの先頭集団にトラッチとファビオが残り、また第8ステージでは60名ほどの先頭にクーンとトラッチが残り大奮闘する。最終ステージを終えて、トラッチは個人総合成績を29位まで上げることに成功し、UCIポイントを5ポイント獲得した。チーム順位は25チーム中17位(※2チームはCOVID-19影響により途中棄権)!
最終ステージでは、リタイアした2選手も会場へ。4月1日からのツアー・オブ・メヴェラナから始まった今季2回目のトルコ遠征は温かい雰囲気で幕を閉じた。NIPPO・プロヴァンス・PTSチームは、新しいチームで規模が小さく、機材もスタッフも最小限。しかしトップチームでの経験豊富なアルバジーニ監督のもと、選手たちには可能な限り最善のレース環境が用意され、選手たちも日々、ベストを尽くして戦った。8日間のレースを通し、チームは貴重な経験を積むことができ、現地スタッフを交えて多国籍なチームメンバーは確かな信頼関係を築くことができた。招待してくれた主催者、支えてくれたスポンサー、そして応援してくれた多くの方への感謝の気持ちを胸に、3週間以上滞在したトルコからヨーロッパへと戻った。